小豆島のよしお


最近の新入り

『グラハム・トーマス』
イングリッシュローズを代表する名花。
アイスバーグの血を引く。




今夜は小豆島の“よしお”のことをふと思い出した。
小豆島には一昨年の5月から翌年の1月いっぱいまで住んでいた。短期滞在。
お向かいに住んでいた50代独身男性が“よしお”。

羊羹持って引っ越し挨拶に行ったら「(羊羹は)いらない」と言われた。
変わった人だと思ったけれど、繊細さも感じさせる人だった。


数日後、朝、ガーデニング中に、人懐っこそうに話しかけてきた。

ゲイパレードって知ってる?」
「・・・?・・・うん・・・。」
「僕ね、この前、行ってきたんだよ」

よしおはデジカメの写真を何枚か見せてくれた。

「僕ね、ゲイなんだ」
「・・・(!)・・・」

お友達になった(みたい)。
ゲイの専門冊子を3冊もくれた。
困っておとー(My Husband)に見せると。おとーは丹念に見て
「ここの料金表ね、これ、なんの料金表なんだろ。
インとアウトってなんだ?アウトの方が高いんだよ。これなんだ?って訊いてきて。」
と私に言う。
よしおに訊くと
「それはね、屋内じゃなくて、外に出てデートしようってなると、料金が高くなるってことだよ。」って教えてくれた。

へぇ〜


数日後、家の裏で育てていたトリカブトを見せたら、
「こういうの好きなんだねー」って言って嬉しそうに大麻の冊子をマタマタくれた。
こちらの方が私は興味深く読んだよ。


ある雨模様の朝、おとーが出勤した後、ふと窓の向こうのガレージに人影が見えた。
「あれっ?」と思って外に出ると、
額から血を流し、青いパーカが血だらけのよしおが、私の植木鉢を持ってウロウロしていた。
「どうしたのっ!なにやってるのっ!」って叫ぶと、
「だって、大事なお花が雨に濡れたらかわいそうじゃないかー」とろれつの回らない口ぶりで答えた。
「だって、だって、友達じゃないか〜〜〜」

「いいから、病院行くわよっ!。・・・ちょっと待って、あんた、クスリやってるの?!」
「え〜〜〜。やってないよ〜〜〜。」

顔を近づけてクンクンすると酒臭かった。
額からダラダラと血を流し、口元も血だらけだったので
「口開けて!」と口を開けさせると口内が切れていた。

植木鉢を持ったまま、コンクリの上で転んでひっくり返ったらしい。

本当にドラッグじゃないんだねって何度も確認して、病院に連れて行った。
待合室で隣に並んで待っている間、
「彼にね、切って欲しいって言われたんだけれど、親からもらった身体を切るのはどうしても嫌だったんだよー」
という恋愛談義が繰り広げられた。
こういう人にはこういう人の苦しみがあるのだな、と神妙な面持ちできいていた。

額を数針縫って治療は終わった。

この町の皆がよしおのことを知っていた。病院でも有名人だった。

よしおはアル中で、病院でも「(今日は特に)絶対お酒はダメよ」と注意を受けた。
でも、その日の夕方と深夜、よしおは酔って救急車を呼んだ。
駆け付けた救急士に「僕ね、ゴルフの遼君が好きなんだー」って無邪気に喋くってた。
救急車のサイレンに驚き心配して、夜中の2時に向かいの家の玄関口に駆け付けた私は呆れて自宅に戻った。


よしおはおとー(My Husband)にも懐いていた。
「花火大会に皆(よしおとおとーと私)で一緒に行こーよー。6時半に迎えに行くね」とお誘いがあった。
花火大会の当日、朝の6時半にピンポンが鳴った。
玄関に出たおとーが「今、朝だよ」とよしおに教えると、
インド風に正装したよしおは「えっ?えっ?」といぶかしげに帰って行った。
酔っ払っていて、朝と夜がわからなくなったんだね。
ちゃんと夕方、正装しなおして又迎えにきたよ。


おとーは目が悪くて、手術の為に香川医大に4泊5日入院した。
私は毎朝4時起きでフェリーに乗り、海を越え、病院に通っていた。
退院した翌日、「わーい、今日は朝寝坊するぞー」って気合入れて寝ていたら、
朝の6時に、ピンポン
皆さん、おわかりですね。
玄関には、満面の笑みを浮かべ、ぶどうを抱えたよしおが立っていた。
「これね、あげる」
「・・・・ちょっと、今何時だか、わかってんの?」(私は低血圧ぶりを遺憾なく発揮した)
「えっ?」(酔ってるのでわからない風)
「もうピンポンしないでっ!」(玄関ドアをバタンと閉めた)


エピソードは山とある。
そんなかんなで、引っ越しが決まった後、留守がちなよしおにろくに挨拶もしないまま小豆島をあとにした。


こちら(静岡)に来てから、よしおが自殺未遂して入院したって噂を
小豆島のかつてのご近所の方から聞いた。
だって、友達じゃないか〜」という言葉がよしおの口癖だった。
よしおは友達が欲しかったんだと思う。

でも、仏心を出すと、多大な迷惑を被るのが常だった。

今は遠い安全な地にいるので、仏心を出しながら懐かしく彼を思い出している。


よしお、元気かぁ?









 

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