アブナイ人


あくびをする ももこ(mix♀4歳)
気は弱いが牙は立派。







今日も続き。


京都山科の駅近くに住んでいた時の事。
駅から2分程の便利な借家だった。
母と暮らすために借りたが、母は亡くなり、そのまま一人で住み続けることにした。
(知り合いの不動産屋を通してだったので家賃は格安だった。)


裏(北…駅側)が広めの駐輪場で、隣接した駐輪場の持ち主の家は「ちゃりんこ御殿」と呼ばれる立派な家だった。
うちの前(南側)には連棟の店が並んでいて、
東側は狭い通りに面していた。その向かい側が元酒屋さん。60歳を超えたご夫婦が住んでいた。
西側は塀があってその向こうは大家さんの敷地だった。

狭い通りは駅に向かう抜け道で人や自転車がよく通ってた。




ある12月の日曜日の夜8時過ぎ。
私はヤフオクで買った薔薇の苗の梱包を、玄関前の狭い通りに面した場所でほどいていた。
街灯がついていたのでそんなに暗くはなかった。

幾つかまとめて購入したので段ボールは大きかった。
カッターナイフでテープの箇所に切れ目を入れ、折りたたんで・・・という作業をしていた時、
その通りに人が立ち止った。駅からの帰りらしかった。

男はうちの敷地に入ってきて私に話しかけた。
私はギョッとしたが「まぁ、ここは街灯で明るいし、人もまったく通らないわけではないし・・・」
と思い、適当に相槌を打って流していた。

男は中近東の国の顔立ちだった。
「何してるの?」
「家族は?」
みたいなことを訊かれたと思う。

気味が悪かったのですぐにでも家に入りたかったけれど、
この男の前で玄関ドアを開けるのはためらわれた。
一緒に入ってこられたら嫌だし。
「家の中にダンナがいる」
みたいな嘘の返答をしていた。


男はだんだんにじり寄ってきて私の作業する手元を覗いていた。
雰囲気がヤバかった。


げげっ、どうしよう・・・。



と思ったが、とにかく一心不乱に作業をしているフリをした。
薔薇のポットを大きな箱の中で固定していた細かい段ボールもいくつかあったので時間は結構かかった。


気まずい沈黙がしばし流れた後
男は唐突に自分の右腕の袖をまくりあげ手首をグイッと私の目の前に付きだした。


「そのカッターでここを切ってくれ」






ええ〜っ!?そっち系!?







「すぐに逃げなきゃ!」と
私は畳んだ大きなダンボールを盾のようにして男に向け、
狭い通りを挟んだお隣さんの玄関をピンポンした。
ラッキーなことにお隣さんの御主人がすぐに出てきてくれて、
私はサッとお隣さんの玄関内にすべりこんだ。


「助けて下さい!」


事情を手短に話しているうちに男は逃げた。
話を聞いたお隣のおじさんは男を追いかけ、
後ろで聞いていたおばさんは駅の交番に走っていってくれた。





勿論男は捕まらなかったが、お隣のおじさんの迅速な行動は素晴らしかった。
暫くは界隈のヒーロー扱いだった。
やっぱり男の人は頼りになるなーと感謝した。




家と顔が変質者にバレているのは怖い。
なもんで、事情をおとー(My Husband)に話して
身の回りのものだけをスーツケースに入れ、インコ二羽を入れた大きな鳥籠を抱え
おとーのマンションに転がり込んだ。
結婚3ヶ月前の話。




とまぁ、こんな事件はあったけれど、
山科の安朱はとても住みやすかったしご近所の方も良いかたばかりで大好きだった。
よく京都の人は底意地が悪い・・・なんて言う人もいるが、
それはその人をとりまく環境次第だと思う。




んなわけで
結婚したし、40もとっくに超えたし、住んでいるのは伊豆だし、
最近は落ち着いた日々を過ごしている。




では。











 

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